『Extreme Hearts』感想

 アニメ『Extreme Hearts』の感想を書きます。
 エクハは今から一年前の2022夏クールに放送されていたアニメで、僕は放送当時から視聴していてその後も何回か見ていて、この記事はまた数日前に見返していて自分なりに考えたことをまとめたものです。


5話

 僕は6話序盤の、雪乃が祖父に試合に行くよう説得されるところが好きなのですが、雪乃加入編の前半の、5話がいまいちしっくり来ていませんでした。陽和はじめRISEのみんなが雪乃の勧誘にすごく熱心で、雪乃が家の事情を説明して、だからRISEには入らないし練習も参加しないと言ったときに、でもこのまま諦めるわけにはいかないとその後もメールや電話を何度もしていたのが、どうしても僕には理解できなかったです。
 もちろん、話の流れ的に、(特に次の試合が野球ということもあり)RISEのメンバーを増やさないといけないから勧誘に熱心なのは当たり前で、また作中で陽和たちが話しているように、雪乃の断り方も未練が残っているみたいな、自分のやりたい気持ちを殺して断っているようでした。でも、他人の気持ちなんて本人が言わないと本当にはわからないはずで、だから陽和たちが勧誘をやめなかったことが僕には理解出来ませんでした。なので、どうしてそこまで勧誘に熱心で、断られても何度も連絡していたのか、まだ僕には見えていない何かがあるのではないかと捜しながら今回も視聴していました。
 しかし、やはりどうしてもみつからなくて悩んでいたのですがふと、そもそも理解出来なくていいのでは?と思いはじめてきました。さっきも書いたように、陽和たちRISEとしては絶対に雪乃に加入してほしいところで、しかも雪乃は自分の感情にきっぱりと区切りをつけて断ったわけではありませんでした。その状況で、もしも僕だったら諦めてしまうところを、陽和たちは勧誘を続けたということです。だから陽和たちの行動は僕には理解できないものなのですが、でもその諦めない姿勢のおかげで雪乃はRISEの、陽和たちの仲間になりました。その事実は大きいし、また5話での陽和たちの勧誘している姿は見ていて気持ちがいいものでした。だから、話の展開として納得出来るし、見ていて楽しいのならそれでいいじゃん、と思うようになりました。むしろ、理解出来ないだけに、そういった行動が出来る陽和たちのことを尊敬するし、好きになれるのではないかとも思いました。
 少し話はズレますが、雪乃が結局試合に出てRISEに加入することを決意するのは、やや膠着状態になっていたRISEの面々からのメールや電話が原因ではなくて、祖父からの、陽和たちを助けてRISEに加入することだって剣の道に繋がるという言葉だったのが、このアニメの偉いところだと思っていて僕が6話が好きな理由です。

11話→12話

 このアニメについて、たびたび体験型というような言葉を耳にしてきました。僕は正直エクハにこの言葉が使われる意味があまり分かっておらず、一人だけズレた感覚でいたのですが、今回なんとなくですが掴めてきたような気がします。
 一番ハッとさせられたのは、12話のRISEのライブシーン。一曲目Happy☆Shiny StoriesのあとのMCで観客に向けて、「試合でもステージでもみなさんに応援していただいて、頑張れって言っていただいて、それが本当に私たちの力になりました。みなさんが見てくれて、応援してくれるから、だから私たちは頑張れます。」と陽和が言うのですが、これって僕たち視聴者に向けて言っているとも捉えることが出来て、そうすると視聴者はRISEのファン、ステージの観客としていつの間にかこのアニメに取り込まれていたことになります。これを強く感じられるのは、これまで11話(+SSS、ブログ)を見てきた中で、RISEのことを視聴者が心の底から応援することが出来るようになったからだと思います。
 僕はその中でも、今回の視聴では特に11話を見ているときにRISEのことを強く応援することが出来ました。アニメに全然詳しくないのであまり分かったようなことを言いたくないのですが、エクハの試合シーンは止め絵をうまく使って躍動感や迫力を演出していて、特に11話はほぼ全編試合だったので、その凄さがより強く感じられたと思います。ギアの光もかっこよくて、陽和が負傷している中コートを駆ける度にノノやミシェルたちと一緒に「陽和~!!!」と叫びたくなっていました。最後の、ラスト一分のシーンはやはり緊迫感があって、またRISEのみんなでボールを繋ぎ最後は陽和がシュートするというのが熱くて、見ていて面白すぎるので視聴者もRISEの優勝の高揚感を一緒に感じることができ、喜ぶことが出来たと思います。
 11話の話をしましたが、当時の視聴者は、本編を見て、SSSを見て、数日後(=放送の数日前)に更新されるブログを読んで、より深くより濃密なエクハに取り込まれる感覚になれたのだと思います。僕も当時の視聴者のうちの一人だったはずですが、そういうものなんだなぐらいに思っていて、あまりこのコンテンツの展開の仕方の特殊さに気が付けていませんでした。

エクハの面白さ

 エクハが何の話だったかというと、葉山陽和の物語です。放送当時の僕はそんなことを全く考えていませんでしたが、他の方の感想を読んだり、また何度か見返しているうちに、確かにそうだと思えるようになってきました。
 今回の視聴でもそのことを意識して、そこを読み取れるように見ていました。すると随所にその要素を感じることが出来ました。特に大事だと思ったのが、ひとりだった陽和が、咲希と出会い、大会に参加して仲間と出会い、対戦相手のチームとも仲良くなっていく、というところです。これらの出会いによって大会で優勝することが出来たし、また陽和自身も、最初は咲希や純華に一緒に試合に出るようお願い出来なかったのが、雪乃を熱烈に勧誘するようになったり、また12話での涙だったり、SSS12話でもその後少しだけ明るく笑うようになったと言われていたり、仲間たちとの出会いによって変わっていったところがあることが分かります。
 こう文章にすると、陽和がいろんな人たちと出会ってきたのにはこんな意義があったんだなあと思えてくるような気がしますが、数日前まで僕は、もっと細かく、例えば雪乃が加入したことによってBanSheeとの試合に勝つことが出来た、理瀬加入回は咲希の掘り下げでもあった、などと一つ一つの出会いに物語上の意味を対応させていくことを考えていました。しかし、当たり前ですがそんなことには無理があり、対応付け出来ないことが出てきて、これは自分の読解力の問題なのか?などとも考えたりして、どうすればいいのか困ってしまうということがありました。
 しかし、5話について書いたことと被りますが、そのような対応付けをする意味はないのではないか?と気が付きました。人と人の出会いに意味を求めるなんてナンセンスで、出会うことそれ自体が大きな意義をもった出来事だと考えるべきなのではないか、と(というかそれが普通の考え方なんだと思います)。また、そう考えていけば、エクハはやっぱりものすごいアニメだということになると思います。SSS12話の話になりますが、Snow Wolfが葉山芸能事務所に所属することになるなんてもうとんでもなく嬉しいことのはずです。でも、僕には人との出会いそのものがすごいことだというのをそのまま信じるというか納得することが難しいのですが、それでも、だからこそこのExtreme Heartsという出会いの物語が尊く感じられて、本当に好きになれたのだと思います。
 僕は何かが面白い、好きだと感じるときに、それが何故面白いのかを考えて、その考えている過程や分かった時の興奮を含めてそれが好きになる人間なのですが、エクハについてはまず無条件でどうしようもなく好きで、それから面白さがどこにあるのかを何とか自分なりに読み解こうとしていました。それで出てきたのが結局自分に理由があって、作品の側にそれを見つけていたわけではなかったというのは少し皮肉な感じがしたのですが、まあそういうものなのかなと思います。


 自分の中でエクハがどのように受け止められてきたのかがある程度分かってきて、かなりすっきりしたのでもうこの記事で書くことはありませんが、最後に一つだけ触れたいことがあります。
 僕は1話を見た時から小鷹咲希さんのことが好きで、放送当時はずっと小鷹咲希さんのことばかり見ていました。しばらくしてから、そのためにいろんなことに気が付けていないと思い、エクハを見るときには小鷹咲希さん以外の登場人物に着目して見ようとしていて、それでやっと分かるようになったことがたくさんありました。今回の視聴もそうだったのですが、しかし今度は逆に小鷹咲希さんにあまり注目出来ていなかったような気がします。そんな中、本編を見終わったあとSSSを見ていてたら、いきなり最初(#00)の回で小鷹咲希さんが「この夏、人生を変えるような出来事とたくさんの出会いがあることを……まだ知らなかったから」と言っていて、ああもっとエクハが葉山陽和と小鷹咲希の二人から始まった物語だというのを強く読んでいってもいいのか、と思いました。これは今後の課題というか、楽しみにしていきます。

 以上です、エクハのことはこれからもずっと大好きだし、応援していきます。