『Extreme Hearts』感想その2

『Extreme Hearts』(以下エクハ)の新アルバム「Start Sign」の発売に際しエクハをまた見返したので、その感想を書いていく。
記事のタイトルにその2とあるが、以前書いた記事(https://nito-cha.hatenablog.com/entry/2023/08/30/143718)の続編ではないので気にせず読んで頂きたい。


画面の良さ、表情の動き

エクハの第一話はともかくテンポがいい。ぱっと見ゴタゴタしてる設定や世界観を伝え、そして物語もしっかり動かしていく。二話以降でこれは何?となるようなことはなかったので、第一話で大体の説明を終えることが出来ているのだと思う。というか、そういうびっくりで勝負してくるアニメでも全くなかった。このテンポのよさは一体どういう工夫によるものなのか、今回ちょっとだけ分かった気がする。
それは画面作りの上手さで、そのシーンで必要な情報が画面に映されているため内容が頭に入ってきやすいし、わざわざ台詞で説明する時間も短縮出来ている。そのため台詞がまどろっこしく感じることもなかった。これは試合中のシーンの話だけでなく、日常の描写についてのことでもあるのだが、私がここを詳しく説明しようとするとボロが出るというか、多分どのアニメでもやっているような当たり前のことや、特に工夫などではない見当違いのことを書いてしまう恐れがあって恥ずかしく全く自信がないので、ともかく私はそう感じたということでひとまず認めて進んでほしい。
そして、次によく画面の中で表情が動くことに気がついた。私はこのことがかなり好きで、エクハを見ているときの楽しさの理由の一つになっているかもしれないなと思った。アニメというものが表情の動きだけでも表現が出来るのだという、当たり前のことにこのとき初めて気がついたが、特にエクハの場合表情に目が行くような画面になっていることが多い気がした。
それからはキャラクターの表情の動きに着目していたのだが、すると五話と六話の雪乃の勧誘の話に対して驚くほど自分の感情が素直についていくことに気がついた。以前の感想でも書いたのだが、私は陽和たちが結構強引に雪乃を勧誘するところがあまり理解出来なくて、結局は理解出来なくてもそれが良いことだったのは間違いないし、勧誘の様子も見ていて楽しかったから問題にする必要がないと、ある意味かなり理詰めで納得したのだが、今回は感情も追いついた。
まず、野球の練習やカラオケをしている雪乃は結構楽しそうな表情をしていたが、反対に家の事情を説明して勧誘を断るときの表情は何かを我慢しているような、切なそうな表情で、そこに気がつくと一気に理解が進んだ。六話での雪乃のおじいちゃんからの説得も少し前は、そういう方向で話していくのかと驚きと感心という気持ちで見ていたのだが、今回はそういう落とし込み方をするべきだよなと納得しながら見ていて、でもそれをちゃんと描くのはやっぱり偉いな~と思った。(実は雪乃の表情については劇中で陽和たちが言及してたし、よく見るとしっかり表情がアップで映されていたりして、逆に何で今まで見過ごしていたんだと言う感じだった)

小鷹咲希さん

エクハの主人公はもちろん葉山陽和であり、このアニメは陽和が仲間と出会い、そして夢を叶えていく物語だ。しかし、陽和と咲希の出会いがなければこの物語は始まっていなかったし、第一話で咲希の「あたしが絶対連れていく」宣言でOPが始まるところからも、小鷹咲希はエクハの準主人公といっても過言ではないだろう。そして何を隠そう私は小鷹咲希さんのことが好きであり、今回のエクハ視聴は小鷹咲希さんのことをもっとちゃんと見るぞというモチベーションもあった。だから、ここでは咲希について改めて見えてきたこと、思ったことを書いていく。

第一話

第一話は陽和が事務所から契約解除を受けるも一縷の望みをかけて「エクストリームハーツ」に参加するという話だが、同時に咲希の陽和を応援する側という関係から、「あたしが絶対連れていく」と陽和と共に戦い、引っ張っていく関係に変化する様子を描いている。
もう少し詳しく見ていくと、咲希は最初の登場から陽和のことがすごく好きな少女だということが分かるが、陽和が「エクハ」に挑戦することを聞くと、大切に思うあまりの心配とそして自身のサッカーをやってきた経験から、陽和に対し大会参加を辞めるようキツくあたってしまう。その後回想で、咲希がサッカーで辛い思いをするも陽和の歌に救われて、また頑張ることが出来たという過去が語られる。そして咲希は自分の陽和に対する気持ちを改めて確かめて、陽和の大会挑戦を手伝うことになる。そしてさらに大会予選の一回戦、ロボ以外のメンバーが一人のためピンチに陥っている陽和を見て、自身もRISEに加わり一緒に戦い、陽和の歌が世界に届く場所まで自分が連れていくことを宣言する。(ちなみに回想に入るところで咲希の部屋に転がっているサッカーボールが映るのだが、こういうところが画面作りが上手だと思った)
初めてこのアニメを見たときは、サッカーを頑張って練習してきたのに、それゆえにチームメイトと軋轢が生じて傷ついてしまったという過去を持っていることと、あと容姿が可愛らしいことが刺さり、咲希のことが好きになったという記憶がある。しかし今は、一度キツいことを言ってしまったところから、やっぱり応援したいと思いきちんと謝ることができ、そして応援することを超えて、陽和を一人にはさせずにその歌が世界に届く場所まで自分が連れていくと決意をする、その強さがとてもかっこいいと思ったし、またこの関係の転換が、エクハという大切な仲間を見つけていく物語の始まりであることの美しさに感動している。そして、その後そのハイパーフットサルの試合で大活躍する咲希の姿はギアの光や挿入歌「明日へのBreakShoot」の演出も相俟って本当にかっこよくて、見惚れてしまった。

岡咲美保さん

実は、私は小鷹咲希さんの声優を務めている岡咲美保さんのことが好きで、応援している。好きになったのはエクハの放送が終わっただいぶ後のことで、その前から小鷹咲希さんのことは好きだったので、今回小鷹咲希さんに注目してエクハを見ていたのは私が岡咲さんを好きなこととは関係なかった。実際に、以前エクハを見返したときはまだ岡咲さんを好きになってなくて、そのときに次は小鷹咲希さんのことをよく見ようと決めていた。
しかし、今回は岡咲さんのことが好きになってから初めてのエクハ視聴だったこともあり、やっぱり意識しないということは不可能で、第一話の最後にOP「インフィニット」が流れたときはうまく言葉に出来ないが感慨深いような気持ちになった(インフィニットは岡咲さんにとって初めてのアニメOPタイアップだった)。しかし同時に、小鷹咲希さんに注目して第一話を見ていて、上記のようなことに気がつき、エクハってやっぱり面白くてめちゃくちゃ好きだという気持ちも改めて思い出していた。そしてこのインフィニットが流れたタイミングというのがその最たるものというか、繰り返しになるが咲希と陽和の関係の変化ターニングポイントの直後だったことで、次第に頭の中が黄色からピンクに変化していった。
それからは変に緊張することなくエクハを見ることが出来ていたというか、小鷹咲希さんの声優、そしてオープニングのアーティストが岡咲さんであるということを自然と受け止めて、その嬉しさも噛み締めながら素直にエクハのファンとして視聴出来るようになっていたと思う。
また、ここはまだ自分の中で議論が必要なところなのだが、小鷹咲希さんが葉山陽和というアーティストを応援していて、そして応援することを超えて共に戦う決意をしたということに、私は自分の岡咲さんを応援する気持ちを少しだけ重ねて見てしまっているところがある気がする。一応断っておくがこれはもちろん私が積極的に何かしらの変な行動を起こそうとかそういう意味では全くなくて、ただ小鷹咲希さんのその強さと前向きな姿勢に憧れを抱いたということだ(語彙力が足りなくて言葉の使い分けが全然出来てないだけです、すみません)。
あと、わざわざこんなことを言うのはもしかしたら失礼なのかもしれないが、改めて意識して聞いてみると小鷹咲希さんの声は小鷹咲希さんにしか聞こえなくて、それがすごいなと思った(たまにここは岡咲さんっぽいなというところがあって、それがまた嬉しい)。

第七話

六話の最後で咲希は理瀬と出会い、第七話では理瀬がRISEに加入する様子が描かれている。この回の咲希はひたすらイケメンで、すごくかっこいい。
自分のパワーを制御できず人を傷つけてしまった過去からスポーツをやることを諦めている理瀬に対し、咲希は真正面から、大好きなことをやっちゃいけない運命なんておかしい、と対峙する。そして咲希は自分の、理瀬のことが好きだという気持ちにも真っ直ぐ向き合っていて、理瀬にRISEに入ってもらうため全力で勝負する。この気持ちいいほどの真っ直ぐさが理瀬の心に届き、ギアを使った渾身のシュートを、同じくギアを使って受け止めようとする咲希に向かって放つ(第六話でギアを使うのはこのシーンのみ)。
今回の視聴では表情に注目していたため、よりキャラクターの感情が伝わるようになっていた。だからどこか苦しそうな理瀬のことを咲希が実直に助けようとしていることが心から嬉しく感じられたし、そのことによって理瀬が自分から逃げていたことに気がつき、再起を決意するという展開には胸が熱くなった。
また、サッカーをやっていたとき陽和の歌によって救われた咲希が、今度は人に手を差し伸べる側になったということもすごく良いと思った。ちょっとわざわざ言及するのは野暮かもしれないが、これはやっぱり咲希がRISEに入って、「エクハ」で再びフィールドに立つようになったからこそ出来たことなんじゃないかと思って、そこもいいなと思っている。
ちなみに、咲希が理瀬のことを好きになった理由の一つは実は理瀬の力の強さなのではないかと思っている。第三話のスマイルパワーの分析によると咲希の"パワー"は7で、純華の6よりも高い(陽和は2)。しかし"フィジカル"は3で陽和と同じ値(純華は6)で"クイックネス"が10であり、また試合の様子を見ていてもそこまで力で勝負するプレイスタイルではないことは明らかだ。理瀬のこれらの数値がどうなのかは分からないが、咲希と始めて出会ったときは氷の柱を空手の技で砕いていたし、フットボールの練習では力強いシュートを見せていて、咲希とは全く異なるタイプの選手であることが分かる。咲希は理瀬の、こうした自分にはない力強さに惹かれたのではないかと思う。

あたしが→みんなで

S×S×Sの12exで、咲希は「頼もしい仲間や支えてくれる人が増えたから… 『あたしが連れていく』……じゃなくて、『みんなで行く』になってます」と語っている。これは、二人から始まった物語が、次第に仲間を増やし、対戦相手のチームとも交流をもち更には事務所に引き入れるなど、どんどん広がっていったことを端的に表している台詞だと思う。
また、陽和がハイパースポーツの選手として、咲希に選手としてはライバルでもあると言わせるほどに成長したことを受けて、「あたしが絶対連れていく」というのが今度は自身のモチベーションで目標となっているというのは、咲希らしい前向きさと真っ直ぐさがあっていい考え方だなと感じたし、やっぱりそんな小鷹咲希さんのことが好きだと思った。

Start Sign

曲についてあれこれ言うのは全く得意ではないが、流石に「Start Sign」についてはやっぱり触れておかなければいけないと思ったので、頑張って書いていく。また、この部分はとっくに「Start Sign」が発売されて一日以上経ってから書いているが、まだ(youtubeの試聴動画以外)ボイスドラマなどは聞いていない状態で書いている。
まず、“風に揺れる名前もない花~”のパート、ここを五人で歌い分けているということについて。この歌詞はどう考えても葉山陽和の楽曲「名もなき花」を意識してのものだろうが、この「名もなき花」という曲は陽和から咲希へのメッセージともみることが出来る。つまり「名もなき花」は二人の歌だったのだが、しかし「Start Sign」では五人でこのパートを歌い分けていて、“見つけてくれたね”というのは咲希が陽和の歌を見つけたという意味だけでなく、それぞれがRISEに加入したことを指していると考えられる。
そして、何度も“一緒ならきっと”と歌っているように、この曲からはみんなで一緒に走り出そうというメッセージがとても伝わってくる。これはエクハが12話かけて到達したテーマであり、あまりにもこの「Start Sign」という曲はRISEの、『Extreme Hearts』の総決算のように聞こえてくる。
しかし、これはエクハの終着点ではないはずだ、というか少なくともその意思はエクハの制作側にはないと思っている。その理由は簡単で、この曲が「Start Sign」というタイトルだからだ。そして私やエクハのファンは知っているが、この曲はそもそも2023年3月26日に山野ホールで開催された「Extreme Hearts × Hyper × Stage」で、キングレコードの三嶋さんが手紙でエクハを続けると宣言し、新曲を出すと言われたことから作られたものである。だからこの曲は私たちエクハのファンに向けた"Start Sign"として受け取ってもいいと、私は思っている。
さらに、大事なことがもう一つある。それは、RISEの楽曲は全て葉山陽和が作詞作曲しているという、エクハの中の設定があることだ。ゆえに、このいろんな意味を含んだ"Start Sign"はなんと時空を超えて、あちらの2048年の世界から、いま私たちが生きている世界に向けて届けられたとも考えられる。これは、エクハがアニメの放送中にブログを展開してリアルタイム感を演出し、そして最終回のファイナルステージでこちらをあちらの世界に取り込んできたことが、E×H×Sを経てより私たち視聴者の世界に直接的にリンクしてきたということだ。
E×H×Sというのは本当に奇跡のようなイベントで、出演者やスタッフのエクハへの愛と熱量、そして私たちファンの愛と熱量によって成り立っていた。そして私にとっては、このイベントに参加したことはある意味人生のターニングポイントと呼べるような出来事で、本当に特別な思い出だった。だからこの日以来、正直エクハを単に"好きなアニメ"と見ることは出来なくなっていて、もっと大きな存在になっいた。だから、「Start Sign」という曲がE×H×Sからの約束を受け継いで、こちらの世界に向けてのメッセージなのではないかという考えに至ったとき、言い過ぎかもしれないが、なんだか自分もエクハの世界の一人であると認められたような気がして、嬉しかった。


以上です、ここまで読んでくださりありがとうございました。